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り、最も注目を浴びている研究テーマである。

すなわち、アジア地域の大都市では、人口爆発により水環境−汚水・衛生と排水が深刻化してきている。この地域の稲作農業は自然の洪水を水田灌漑に利用しており、今後の農業の合理化を考えるとき障害となる。大河川デルタでは、機械排水技術の導入が必要である。この地域の衛生環境は大変悪くマラリヤやジストマなどの伝染病が排水条件の悪い所で発生しているので排水が大変重要である。

(2)インドネシアの広域排水問題

ここでの重要な点は気候と地形である。年間降雨が2,000ミリ以上の多雨地域と1,000ミリ程度の小雨地域にわたっている。地形的には、平地部は熱帯性のスワンプを形成し、排水が悪い上に土壌が強酸性のため作物が育たない。

スワンプの開発で重要なことは、排水促進のための地下水位の設定であり、地表面から40〜70?pの場合は乾きすぎて分解することもなく、日100?o程度の豪雨にも対応できる。スワンプのある場所はスマトラ島の東海岸でシンガポールにも近く舟運の上でも地の利が大きく、今後の開発には大きな効果が期待できるところである。

(3)タイ国チャオピヤ川上中流域の水文環境と流出特性

このタイ国チャオピヤ流域は、経済発展による水需要の増加と年降水量の減少傾向から深刻な水不足問題が起きている。また1995年の台風来襲では農地や商業地等が数カ月湛水する等国民活動に大きな被害を出した。

チャオプラ川は、河口から700?q地点で標高が250mと大変緩勾配地形で下流域は広大な低平デルタで干潮域となっている。タイ国灌漑局では、数多くの水文観測を行い、その結果これを利用できる水文情報の表示・解析システムをわれわれは開発した。このシステムは、天水田・一期作・二期作の灌漑水田を考慮することもできるものである。

(4)メコンデルタの水文と農業

洪水が起きるとそれをとめようとし、水が多すぎるから排水しようと考える。これはメコンデルタに限らず熱帯アジアのデルタの実態にそぐわない考え方である。メコンデルタの洪水常襲地域には、つい最近まで浮き稲が栽培されていたがドイモイ以後は姿を消してしまった。洪水期間をさけてその前後に二期作体系を取り入れたからである。適切な品種と栽培法を替えるという環境適応型の技術を選択したからである。

生態的立地を活かした土地利用のあり方をまず考え、それを安定化させるために小さい土工を積み重ね、結果として水が制御され、管理されるような伝統的にしてかつ新しい様式を作りあげることが望まれる。

 

 

 

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